イザベル・ユペールの新たな代表作『未来よこんにちは』で贅沢なひと時…

私はミヒャエル・ハネケの監督作が、とても好きなのですが、「未来よ こんにちは」のイザベル・ユペールが主演で出ている『ピアニスト』のイメージが強かったので、『未来よ〜』を見たときは何だか(勝手に)等身大の彼女を見ているようで(勝手に)安心してました。

今作で、イザベル・ユペールは、人生も折り返しというミドル世代の、高校で哲学の教授をしています。
子供も大きくなり、旦那と余生を過ごすかと思いきや、その長年連れ添った旦那から「好きな人が出来た」と不倫していたことを告げられます(このとき、ユペールからでた一言が「死ぬまで一緒だと思ってた…」が凄く重くていいです…)

 

さらには若干ボケか始まりつつある母親を施設に預け、それだけでもなんだか母親を死に追いやってるような罪悪感をいだいていたのに、良かれと思って上の階に部屋を取ったことが仇となり、母は飛び降りて死んでしまう、激しくもあっけない最後に…

おまけに年寄り(というと、ミドル世代女性にどつかれそうですが…)特有の、柔軟な考えができず、時代に取り残された結果、彼女が出版している哲学の本も売れず…
家庭も母も仕事も停滞したユペールはまさに…

そのようです。
なぜこんな悲観的ストーリーの映画が響いたのか、20代後半に差し掛かったケツの青いガキが考えて見ました。
①全く現状に悲観していないし、立ち止まることをしない勇ましいユペールさん。

普通の人間なら、旦那に離婚を打ち明けられれば、怒ったり悲しんだりするものだと思います。

昔のフランス映画なら、ここぞとばかりに激情溢れる演技を見せくけるアッピールポイントですわ。

ユペールさんも、今作は別に普通の50代くらいの女性ですが、(ユペールさんいわく、40過ぎた女は生ゴミだそうです…)考え方がべらぼうにポジティブというか…

別に離婚したからって死ぬわけじゃないしくらいのスケールで淡々と話す様は、一貫してこれまでの女性像と異なり続けます。

ひどい時には、離婚を言い出した旦那が、モジモジと踏ん切りがつかない様子に腹を立て、「全て変わるのよ、寝ぼけてる?ほーら起きなさい」と目の前で手を振る始末。たくましいにもほどがある。

そんな感じで、逆境に直面した時、あえて立ち止まらないスタンスが、よりユペール死を美しくしているように感じます。それは性的な意味ではなく、芸術品を見ているのに近いです…

自身のお母さんが亡くなった時は、さすがに涙していましたが、お母さんが生前可愛がっていた猫を、引き取ったものの、それは一時的で、猫アレルギーのユペールさんはことあるごとに人に会うと、「猫いらん?」と平気で母親の形見?人に押し付けてました…

②イザベル・ユペールの立ち振る舞いが全く60代に思えない。

実年齢は今年で64歳になったユペールさん(フランスの女性に年齢をたずねるのは、マジで御法度らしいんで、私みたいにへらへら無神経に聞いてはいけないようです・・・)。

普通それくらいの年になったら肌がたるんで来たり、しわが気になってきたり、髪にコシがなくなってきたりと、自分が年織りだったら耳を覆いたくなるようなことを羅列したのですが、ユペールさんにはその様子が全く感じられないんです(年寄り特有のガリガリ感は否めませんが…)

何をするにもテキパキ。食事の席を片づけるのも、デモ中の学生を論破するのも、ぼけ始めたオカンを施設に送り飛ばすのも、離婚の話も、葬儀も、テキパキ…

さらに彼女は何かをやろうと思ったら、最後までやり遂げようとするタイプのようで・・・

その例えが離婚を告げた夫が買ってきた花の捨て方の例しか挙げれないのは申し訳ないのですが・・・

夫が妻を慰めるために買ってきた花を見て、怒ったユペールさんはまるで叩きつけるかのように、ゴミ箱へ執拗に突っ込もうとします。

しかし茎の棘が刺さったのか、ひるむユペール。それでもあきらめない彼女は、(おそらく)イケアのショッパーに花をぶち込み、もう目にするのも嫌と言わんばかりに、マンションのゴミ捨て場へショッパーごと放り込むのでした(しかしすぐ戻ってきて、イケアショッパーだけ回収するあたりとてもチャーミングだと思いました)

あとは、夫と最後のバカンス(夫と過ごすのが目的ではなく、おいてきた私物を回収するため)に行ったのですが、電話が通じないことに腹を立てた彼女は、まるで意地でも電話したると言わんばかりに、べちゃべちゃな海辺や、ゴツゴツした岩場をひたすら歩きながら、電波の通じるところを探し求めます…

このご時世にそういうどアナログな意地を張るのも、年相応と言うか…おっといけね。
③ネコ

母親が可愛がっていた黒猫。名前はパンドラといい、たいそう物騒な名前となってます…

ユペールさんは猫アレルギーなので、いくら母の猫とはいえ、自宅では飼いたくないというか、飼えないのです。(しかし今作には猫アレルギーを発症するシーンが全くないどころか、普通に猫と寝たりしているんですが…)

息子から昔の教え子(若き日のガエル・ガルシア・ベルナルを背を高くした感じ)までに片っ端から猫譲渡を頼み込むユペールさんですが、軒並み断られます。

しかし、完全におひとりさまとなった時、昔の教え子が『ザ・ビーチ』よろしく、山で仲間と共同生活しているところへ、猫と一緒に赴きます。

そこでのほほーんとしているユペールさんをよそに、黒々しいパンドラさんは、なんと未踏の地にも限らず、スタスタと青々とした緑の中へ消えて行きました…

あんなに猫いらんかと、吹聴?していたのに、家猫のくせにこんなところでウロウロしたらきっと無事じゃ済まないと、オロオロし始めるユペールさん。

日も暮れ、昔の教え子がインテリな議論を交わしてるのをよそに、ユペールさんは不思議な楽器?を使ってパンドラさんを呼び寄せます(シュール)が、失敗に終わります。

教え子はきっと野生でのびのびやっているとユペールさんを慰めます。

そしてその通り、パンドラさんは外でネズミを捕まえて、ユペールさんに見せびらかすのでした…

これが彼女の逆鱗に触れたのかは全く分かりませんが、パンドラさんは最終的に、その教え子に、引き取られ山の生活を満喫しているようです…


そんなユペールさん(とパンドラさん)の魅力が詰まっており、ラストシーンはどこかこの映画が終わってしまうのがもったいなく感じてしまうような、贅沢な時間を過ごせます。
いいなあー、私もユペールさんに飼われたいわあ…

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